誰もがそう思ってしまうくらい、リアリティのあるホラー小説をご紹介します。
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2019年、本屋大賞ノミネート作。
作家が主人公で、さも芦沢央さんご本人のような書き出しで、冒頭から引き込まれてしまいます。
怪談に関わったことで、近づいてきてしまう…読者も巻き込まれる感覚に、背筋が凍ります。
読み進めるごとに、怪談がさらなる怪談を呼んでいく、不思議な吸引力を堪能してくださいね。
「火のないところに煙は」芦沢央|あらすじと内容
- 第1話 染み
- 第2話 お祓いを頼む女
- 第3話 妄言
- 第4話 助けてって言ったのに
- 第5話 誰かの怪異
- 最終話 禁忌
作家の「私」の元に、小説新潮から依頼がありました。
「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか?」
作家は、8年前に友人の紹介で出会った女性から、相談を受けたことを思い出します。
謎のまま終わった事件、助けられなかった友人、事件から目を背けた自分のこと。
今さらだけど、こんな依頼が来たのは、ちゃんと向き合うべきときが来たのではないか…。
そう思って引き受けたところ、作者のもとに、数々の怪談が寄せられるようになります。
それらのエピソードには、どれも共通して関わった人物がいたのです。
バラバラに起きた怪奇のはずが、つながっている…関連に気づいた瞬間、ゾクッとするはず。
モキュメンタリー|実際にあったことのように進む物語
架空の物語を、まるで実際に起ったことのように表現した作品を、モキュメンタリーといいます。
現実に起こったことについて書くのは、ドキュメンタリー。もじっているわけですね。
「火のないところに煙は」の場合、モキュメンタリーの完成度がとても高いのが特徴。
主人公の作家は、最後まで名前が登場せず、一人称の「私」で通すため、「芦沢央さんのことだ」と自動的に結びつけてしまいます。
この作品を読んだ人は、まずほぼ全員が「実話なの?」と疑うでしょう。
そして、この「疑う」という感情こそが、この作品のテーマでもあるのです。
一度持ってしまった「疑う」気持ちをなくすことは不可能
絶対に疑ってはいけないの
本作では、ある占い師が鍵を握っています。
その占い師を、疑ってはいけない…だけど、そんなこと、本当に可能なのでしょうか。
「信じよう」と心に決めたところで、人の気持ちは簡単に揺らぐもの。
「疑わないぞ」と思った時点で、すでに疑念を持ってしまっているし、一度抱いてしまったら完全には消せません。
「火のないところに煙は立たない」ということわざも、疑うという感情を正当化するためのものともいえます。
そもそも占いって、当たるも八卦当たらぬも八卦、信じるか信じないかは自由。
だけど、もし信じなかった場合、自分にも怖いことが起こるのでは…?
そんな想像に寒気が止まらない、リアリティがあります。
「火のないところに煙は」芦沢央|実話以上にリアルなホラー小説
怖い話やグロい話は苦手なのですが、芦沢央さんの作品なら…と思い、手に取りました。
そして、まんまと「怖い!」と震えているので、作者の思うツボなのかもしれません。
作家が主人公という点が、よりいっそうリアルさを際立てています。
今までの芦沢央さん作品とは違う、現実と想像の間をすり抜けていく作品を、ぜひお楽しみください!
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「火のないところに煙は」は、2019年本屋大賞ノミネート作品。
大賞受賞作や、他のノミネート作を記事にまとめています。
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