話題作で問題作、いろんな意味で衝撃の作品をご紹介します。
さよならミニスカート 牧野あおい
ヒロイン、雨宮花恋=神山仁那の、再生と成長を描いた物語。
連載スタート時、りぼん編集長が「このまんがだけは、読者の皆さんに面白さが伝わるまで、何があっても連載を続けていく」と、異例の宣言をしました。
少女マンガらしくない、と思う人もいるかもしれません。
だけど、女の子だからこそ、知っておかなくてはならない、向き合いたいお話。
少女マンガだからと敬遠しないで、全世代、男女問わずいろんな人に読んでもらいたい作品です。
「さよならミニスカート」の登場人物
- 神山仁那(雨宮花恋)…アイドルグループPURE CLUBのセンターだったが、傷害事件の被害にあい、引退。本名でひっそりと高校生活を送る。
- 堀内光…柔道部の男子。かわいい系の顔立ちで、女子からの人気が高い。仁那が雨宮花恋だったことにいち早く気づく。
- 長栖未玖…男子に大人気。女の子らしさを武器に、男に媚びる計算高い性格。
男らしさ、女らしさってなんだろう? ミニスカートは誰のもの?
痴漢、性差別…たとえば、「スカートをはいていたら、触られても文句は言えない」というような呪縛。
性別による違いは、確かにそこにあるけれど、だからといって、社会の仕組みはあまりにも理不尽で不公平。
そんな社会派な面だけでなく、少女マンガに欠かせない、恋や胸のドキドキもきちんと描かれています。
このまんがに、無関心な女子はいても、無関係な女子はいない。
この作品がりぼんで連載されて、今の小学生・中学生たちが読むことに、大きな意味があります。
「さよならミニスカート」あらすじと内容
アイドルグループPURE CLUBのセンター、雨宮花恋(あまみやかれん)。
黒髪ストレートのロングヘア、かわいらしい見た目とは裏腹に、徹底的にストイックなアイドル。
しかし、花恋は、握手会で暴漢に切りつけられ、腕に傷を負ってしまいます。
犯人は逃走し、行方がわかりません。
周囲の対応にも傷つき、誰も信じられなくなった花恋は、芸能界を引退。
本名の神山仁那(かみやまにな)として、髪を自ら短く切り、素性を誰にも明かさず、実家を離れて高校生活を送ることに。
男子と同じスラックスをはいて、愛想もなく、クラスでは変わり者扱いで浮いた存在。
そんな中、堀内光だけは、仁那が花恋だったことに気がつきます。
光の妹は、担任教師にセクハラされたショックから不登校になり、引きこもり状態。
そんな中、ピュアクラの動画を見て「女の子でいていいんだ」と勇気をもらったという…。
光の「アイドルになってくれて、ありがとう」という言葉に、自分がたどってきた道を肯定してもらえたような気持ちになり、特別な感情を抱きはじめる仁那。
元所属事務所に、雨宮花恋あてに匿名の封書が届き、中には今の神山仁那の隠し撮り写真が入っていました。
つまり、何者かが、神山仁那が雨宮花恋だったことを知っているのです。
引退してから約半年、何事もなく過ごしてきたのに、光と急接近したタイミングでこの事態。
PURE CLUBメンバーで親友のサラや、元マネージャーは、光を疑い、仁那と引き離そうとしますが…。
「さよならミニスカート」の3つの魅力を解説
「さよならミニスカート」は、話題性、メッセージ性はもちろん、たくさんの魅力のある作品。
- 男子も女子も知っておくべき!日常で何気なく接する「性差別」を自覚する
- 自分を大切にするって、どういうこと?女の子をすり減らす「かわいい」の罠
- アイドルも高校生も大人も、同じ人間。消費される対象じゃない
男子も女子も知っておくべき!日常で何気なく接する「性差別」を自覚する
冒頭、担任の教師から「近辺に変質者が出たから、女子は放課後の部活を禁止する」と言われるシーンがあります。
また、未玖が痴漢に襲われた?と噂になったとき、担任は「太ももを触られただけだ」と言います。
これを読んでも、「何が問題なの?」「よくあることでしょ」と言う人もいると思います。
その認識、改めたほうがいいですよ。
そういう人がいるから、女の子たちも、うっかり無自覚に「そういうものなんだ」「私が我慢すれば済むんだ」って思い込まされてしまうんです。
性差別をしている側は、何気ないつもりでも、小さな違和感はいずれ大きな傷になるもの。
自分を大切にするって、どういうこと?女の子をすり減らす「かわいい」の罠
未玖は、女の子のかわいさを売りにして、男子の人気を得ていることがアイデンティティ。
周囲の男が期待するような反応や、喜ぶようなことを言う未玖。
「女性専用車両なんていらない、男の人みんなを疑っているみたいでなんかヤだな」と言ってみたり。
痴漢に太ももを触られたときも、「みんな大げさすぎ! たかが太ももだよ?」と笑っています。
女子にもソツのない対応で、一部の子からは反感を買いながらも、ちゃんと女友達もいます。
孤立はしていないけれど、なんだか誰にも心を開いていないように見えて…。
「かわいい」を武器にしているように見えて、実は未玖自身も傷ついている。
みんなに「未玖はかわいい」と言われたくて、自分をすり減らしている。
そうさせているのは誰なのか…、男性も女性も、社会全体のことを見つめ直してほしい。
アイドルも高校生も大人も、同じ人間。消費される対象じゃない
握手会でファンに切りつけられたのは、もちろんショックなことですが、仁那が傷ついたのはそれだけではありません。
「CDを何枚も売りつけて儲けてるんだから、恨まれて当然」「嫌ならアイドルなんか最初からやるな」という世間の声。
ピュアクラ時代は、グラビアなど、ほとんど下着のような写真の仕事もしてきました。
「こんなことしてるから、ファンに刺されるんだよ」
こうなったのは自分のせいなんだ、と思わされるような言葉が、仁那にとってはいちばんつらいはず。
アイドルだって、私たちと同じ人間で、ちゃんと感情を持っています。
誰かに消費される対象なんかじゃないし、目の前の生身の相手に言えないようなことは、アイドルにだって言うべきじゃない。
一生懸命ダンスしたり、前よりも歌がうまくなったり、笑顔で握手してくれたり…アイドルたちが頑張っているのを見ているだけで、ファンはうれしいのです。
「さよならミニスカート」主人公が平手友梨奈さんに似ていると話題
神山仁那は、「てち」こと、欅坂46のセンター、平手友梨奈さんに似ているともっぱらの話題。
ショートカットや、凛とした態度、周囲に媚びないところがそっくり。
「さよならミニスカート」は、マンガだけでも超話題作なので、映像化されるのはもはや時間の問題。
もし、ドラマ化・映画化されたら、平手友梨奈さんが演じるのではないか…?
「さよならミニスカート」は、全女子と男子に読んでほしいマンガ
どんな女の子も、自分の体や意志、気持ちを大切にしていい。
どんな男の子も、女の子のルックスを一方的にジャッジしたり、性差別的な言動をするべきじゃない。
そんな当たり前のことが、無自覚で暴力的に裏切られている現状。
男性には「こんなことありえない」と言う人もいるかもしれないけれど、女性からすると「あるある」なんです。
犯人探しのハラハラドキドキもあって、目が離せない作品ですよ。
関連記事
私は、モーニング娘。などが所属するハロープロジェクトのアイドルたちが大好き。
ファンとして「推させていただいている」「応援させてもらっている」という気持ち。
彼女たちが消費されずに、のびのび楽しく歌って踊れれば、それで満足です。
マンガって何巻もあるし、買うとかさばる、置く場所がない…とお悩みの方には「Kindle」がおすすめ。
夫や子どもも読むマンガは、紙の本で買うのですが、私しか読まないものはKindle一択。
マンガって、電車の中とか、家の外で読むのちょっと恥ずかしい気がするけど、Kindleならそれも解決!
日替わり・週替わり・月替わりでセールがあるほか、Kindle Unlimitedでは、月額980円(30日間無料)で読み放題のタイトルもあるので、チェックしてみて下さいね。