こんにちは。シーアです。(@seer1118b)
瀬戸内海の小さな島を舞台にした、青春の一瞬のきらめきを感じる小説をご紹介します。
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朱里、衣花、源樹、新。4人の高校生たちが主人公。
島の子どもたちは、高校生になるとフェリーで本土に通います。島には高校がないからです。
島への移住に憧れる都会人もいますが、少子化、過疎化、医師不足など、根深い問題を抱えている…
淡い恋心や、青春のきらめきを閉じ込めて、一緒に過ごせる最後の季節を描きます。
辻村深月さんは、10代の心の機微を描いたら最強
デビュー以来、10代の繊細で切実な感情を描いてこられた、辻村深月さん。
言葉にならなかったはずの感情を、的確にすくい上げてくれます。
過去にタイムスリップして、高校生の頃の私に届けられたかのような言葉たち。
なぜ、こんなにも私の気持ちが分かるんだろう?と思うほどです。
2004年、「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受賞されています。
学校を舞台にした物語で、まさにデビュー作にして辻村深月さんの代名詞のような作品でした。
その後も「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」「ツナグ」など、次々に話題作を発表されています。
2014年から毎年本屋大賞にノミネートされていましたが、2018年「かがみの孤城」でついに本屋大賞を受賞されました。
「島はぼくらと」辻村深月|あらすじと内容
舞台は、瀬戸内海に浮かぶ冴島(さえじま)です。
島の子どもは、いつか本土に渡ります。まず、島には高校がありません。
フェリーで本土の高校に通います。
島の母親は、子離れの時期を強く意識せざるを得ません。
15歳または18歳で、子どもと離れて暮らすことになるからです。
主人公は、高校生の男女4人。
彼らもまた、それぞれの進路を前に、共に過ごせる最後の季節なのです。
今だけのきらめきに儚さを感じます。
「島はぼくらと」辻村深月|登場人物は高校生4人
「島はぼくらと」にメインで登場するのは、島で暮らす高校生4人。
- 朱里…母と祖母と暮らす、純粋でのびやかな女の子。物語のメイン
- 衣花…女優のようにオシャレな、島の網元の娘。はっきり物を言うタイプ
- 新…おとなしい、演劇好きの男の子。島へ戻るフェリーの関係で30分しか演劇部に参加できない
- 源樹…Iターン族でリゾートホテルの息子。見た目はイケメンだけど不良っぽい
フェリーで高校に通う、彼らを中心に、島全体をひとつの共同体のように描いています。
「島はぼくらと」|幻の脚本とは?怪しい作家、霧崎ハイジ
物語は、彼らが高校に通うフェリーの中で動き出します。
胡散臭い作家、霧崎ハイジが、声をかけてきたのです。
霧崎が言うには、冴島には「幻の脚本」が存在するのだと。
それを探すためにIターンしたのだと言います。
怪しいけれど、興味を隠せない4人。退屈な島の生活に、ちょっとした刺激です。
しかし、霧崎は、Iターンしてきた人達の間でも浮いた存在になり、冴島に不穏な空気を撒き散らし始めました。
「島はぼくらと」過疎化、医師不足…離島の問題点を描く
都会の人たちは、島の人たちのあたたかいつながりや、あふれる自然に期待して「また来たい」とか「移住したい」と言います。
しかし、離島にはポジティブな面だけでなく、ネガティブな要素もあります。
例えば、少子化、過疎化、医師不足、地元民と移住者の確執、Iターンの受け入れ問題、シングルマザー…。
シングルマザーの蕗子と、娘の未菜
蕗子は、有名な水泳選手でしたが、取り入ろうとしてくる人々に疲れて、既婚者のコーチと不倫をして、妊娠してしまいます。
それで、娘の未菜とともに冴島にやってきました。
蕗子のように、居場所を必要としている人もいます。
島は、国土交通省から地域活性デザイナーのヨシノを招き、Iターンやシングルマザーを受け入れ、過疎にならず成功しています。
例えば、村長が、自分の利益や関係者の都合を優先して、施策を進めていたり…。
のどかな島のようで、そんな生臭い現実があるのです。
「スロウハイツの神様」の赤羽環が登場
辻村深月さんの作品は、それぞれがリンクしていることが多々あります。
過去の作品の登場人物が、他の作品に関わってくるのです。
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今回は「スロウハイツの神様」から、赤羽環が登場しています。
チョイ役ではなく、結構しっかり物語に絡んできますよ。
みんなが島を思い、人と人がつながるラスト
いくつかの刺激的な事件と、恋愛や部活や、ままならない高校生活や、甘酸っぱい青春。
そうしている間に、それぞれが別の道に進む時期がやってきてしまいます。
「いってらっしゃい」「いってきます」と島を離れる人たち。
でも、「おかえり」「ただいま」は、ずっと来ない。
みんな出ていってしまい、戻ってくる人なんてほんのわずか。
彼らが何を思い、どう考え、道を選んだのか、ぜひ本作を読んでみてほしいと思います。
みんなが島を思い、人と人がつながって、よりよい島を目指すラストに胸が詰まります。
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