寺地はるなさんの小説が好きです。
つらい状況にあっても優しい登場人物、綺麗事じゃない世界、現実のほろ苦い毒、そんな中でもしなやかな心を忘れない強さ…。
人生いろいろあるけど、私ももうすこし頑張ってみよう、と思える作品たち。
読後感がよく、心が疲れているときにもピッタリです。
この記事では、寺地はるなさんの小説を、あらすじと感想を交えて、個人的おすすめ順にご紹介します。
きっと、1冊読んだら、寺地はるなさんワールドにどっぷりハマること間違いなし!
寺地はるなさんのプロフィール
寺地はるなさんは、主婦業とお仕事を両立しながら、創作活動をされていました。
ポプラ社小説大賞を受賞され、2015年に「ビオレタ」でデビュー。
デビュー前、はてなブログを運営されていたため、はてなブロガー内のレビュー記事が多く、親戚が作家デビューしたかのようなお祭り騒ぎでした(笑)
小さいときから、本を読むのが好きだったけど、親がいい顔しなかったから隠れて読んでいたんだって。
寺地はるなさんの作品中には、田舎の息苦しい人間関係や、昔ながらの価値観が登場します。
また、家族との複雑な関係や、ねじれた感情が描かれることも。
過去の経験が影響しているのかもしれないね。
だけど、やりきれないまま終わるのではなく、希望が感じられる作品たちなので、最後には心があたたかくなるんです。
寺地はるなの小説|個人的おすすめランキング12選
私が読んできた、寺地はるなさんの小説のおすすめランキングをご紹介します。
読む人によって響くポイントが違うだろうから、参考までに…!
ひとつひとつ紹介していくよ!
「水を縫う」寺地はるな
普通、当たり前、みんな同じ、女なのに、男だから、みっともない…世の中にはびこる、そんな言葉たち。
価値観の枠に閉じ込められて、息苦しい思いをしている人に読んでほしい作品です。
個人的には、2020年ベストノベルだよ!本屋大賞とってほしいな。
清澄は、裁縫や刺繍が好きな高校1年生男子。
学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いていますが、「好きなものは好き」と貫く強い気持ちを持っています。
姉の
清澄は、もうすぐ結婚する水青のために、ウェディングドレスを手作りしようと決めます。
母のさつ子は「そんなん、やめとき」「素人が作ったドレスなんかみっともない」と言いますが、清澄は「やってみなわからんって」とやる気満々。
離婚した父親がデザイナーの道を志して挫折したこともあって、さつ子は清澄に同じ道を歩ませたくないのです。
水青のドレス作りがきっかけで、離れて暮らす父親とも交流があるよ。
「普通」と定義された多数派に、どことなく抵抗を感じる人たちへのエールのような小説。
読み終わったあとは、清々しい涙とともに、人生を丸ごと応援してもらったような感動で満たされますよ。
「大人は泣かないと思っていた」寺地はるな
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「男は強くあるべき」「女は家庭のために尽くすべき」…そんな古臭い恋愛観・結婚観は、昔ほどではないものの、今でも根強く残っています。
特に、田舎はまだまだ男尊女卑が続いてるよね。
主人公の時田翼をはじめ、閉鎖的な田舎で暮らす人たちにスポットを当てた連作短編集です。
メインとなる登場人物を変えながら、いろんな角度から語られる、新たな価値観。
昔ながらの「当たり前」を押しつけられて、自分の意見を出せず、生きづらい思いをしている人たちを、解放するような作品です。
若者も老人も、男も女も、自分のしたいように生きていいんだよ。
「夜が暗いとはかぎらない」寺地はるな
あかつきマーケットの周囲の人たちを描いた、小さなお話同士がからみ合う連作短編集。
閉店が決まったあかつきマーケットには、「あかつきん」というマスコットキャラクターがいます。
突如失踪したあかつきん(の着ぐるみ)が、街のいろんなところに出没しては、人助けをしているという…。
YouTubeに動画が上がっていたり、あかつきんのしっぽを引っ張ると幸せになれる、とまことしやかな噂も流れました。
あかつきん(と中の人)は、何をしようとしているんだろう?
それぞれのお話が、少しずつつながっているところが素敵。
葛藤を抱えながら、日々を精いっぱい生きる人たちが、それぞれ一生懸命で、心に明かりをともしてくれるような作品です。
「月のぶどう」寺地はるな
天瀬ワイナリーを営み、発展させてきた母が、突然の病でこの世を去りました。
天瀬家の双子たちは、母の跡を継いで、ワイン作りに奮闘することに。
ふたりは、ワイン作りだけでなく、人としても成長していくよ。
姉・
弟・
光実は人に頼ることを覚え、歩は仕事との向き合い方を知り…。
誰もがひとりっきりじゃないし、ふたりっきりでもありません。
仕事への向き合い方、不幸比べをする不毛さ、自分を磨く努力の価値、人に頼る才能…さまざまなメッセージが詰め込まれた作品です。
読む人の今の状況によって、響くポイントが違う本だね。
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな
人口300人の小さな星母島で、託児所を併設した民宿を営んでいる千尋。
…というと、心あたたまるほっこりストーリーを期待するかもしれません。
そう思って読むと、いい意味で裏切られるかも!
なにしろ千尋は「ほっこり素敵発言であなたを救うみたいなのは期待しないでくださいね」と言い切る女性です。
子どもにまつわる願い事が叶うという「母子岩」を目当てに、家族や親子など人間関係に悩める人が訪れます。
ありのままを包み隠さずストレートに表現する千尋の言葉は、心をふっと軽くしてくれます。
お客さんだからってむやみにおもねることなく、フラットで正直な千尋の目線に勇気がもらえる小説です。
「わたしの良い子」寺地はるな
椿は、出ていってしまった妹の子ども、朔と一緒に暮らしています。
母子でもないのに、普通…じゃないよね。
決して嫌々面倒を見ているわけでもないし、朔のことを大切に思う気持ちは確かなもの。
だけど、周りの人には、椿の行動は献身的に思えるようで、いろいろなことを言われます。
子育てって、唯一の正解がどこかにあるわけではなくて、その都度考えながら最善と思われる手段を選んでいくしかないのです。
「こうしたらこう育つ」なんて明確なルールがあるわけじゃない。子どもと相対する時は、いつだって手さぐりだ。
「今日のハチミツ、あしたの私」寺地はるな
碧は、仕事を辞めて住み慣れた街を離れ、恋人の故郷である「朝埜市」という田舎に移り住みます。
仕事を辞めるなんて、人生の一大決心だね。
ところが、彼氏は父親に碧のことを話しておらず、結婚を許すどころではありません。
碧は、蜂蜜園を経営している黒江さんと出会い、養蜂を教えてもらうことで、自分の居場所を作っていきます。
「蜂蜜をもうひと匙足せば、たぶんあなたの明日は今日より良くなるから」
昔、見知らぬ女性に蜂蜜の小瓶をもらったときの、思い出の言葉に導かれるように、蜂蜜作りに関わっていきます。
おとぎ話のように「めでたしめでたし」とはいかないけれど、誠実さを武器に、自分の人生を、自分のために切り開いていく碧を応援したくなりますよ。
「架空の犬と嘘をつく猫」寺地はるな
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嘘つきの家系と呼ばれる、
幼い次男が亡くなってから、母はまるで彼が生きているかのように振る舞い、父は愛人のもとに逃げるように。
主人公の山吹は、母の空想に合わせながら、家族のバランスをとって生きてきました。
心の支えは、架空の犬。
自分の中に、想像上の犬を飼っていて、疲れたときはそっと犬をなでて、今までなんとかやりすごしてきたのです。
1988年から2018年まで、5年刻みで、30年かけてつくられた家族の形。
山吹の年齢でいうと、8歳から38歳までの物語だよ。
山吹が、幼くして亡くなった弟のこと、家族への思いを語るシーンは、何度読んでも泣いてしまいます。
こんな環境でも、誠実さを失わずにまっすぐな山吹には、幸せになってほしいと思うよ。
「希望のゆくえ」寺地はるな
希望が一緒にいるのは、勤務先の会社が管理するマンションに住んでいた、放火犯の疑いがある女…。
どうしてだろう!?事件に巻き込まれたとか…?
誠実は、周囲の人たちに聞きます。「弟は、あなたから見てどんな人でしたか」
人によって、まったく違う印象、別人のような姿をみせる弟を、よりいっそう遠く感じる…。
人の本質って、人生の希望って、なんだろう。希望は幸せだったのだろうか?
そんな問いのひとつのアンサーになる作品です。
「みちづれはいても、ひとり」寺地はるな
別居中の夫が失踪し、故郷の島にいるらしい…弓子は、隣人の楓さんとともに、夫を探しに行きます。
アラフォーの女性ふたりの珍旅行を描いた、ほどよい距離感が心地よいロードノベル。
…って書くと、ドロドロした愛憎劇みたいだけど、むしろ逆でサラサラしたお話だよ。
なぜかそこで婦人会の手伝いをしたり、夫のハトコにあたるめんどくさい女と関わったり…。
流されているようだけど、どこにいても自分の芯はしっかり持っていて、意外にブレない弓子に共感するのです。
人はみんなひとりで生まれてきて、ひとりで生きていくけれど、ときどき「みちづれ」を見つける。
夫婦だって、友達だって、ふたりじゃなくて「ひとりとひとり」なのです。
「正しい愛と理想の息子」寺地はるな
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ハセと沖は、違法カジノで働いていましたが、沖がヘマをして借金を抱えてしまいます。
元締めの灰嶋さんに、損失分の200万円を返済しなくてはなりません。
ふたりは、寂しい女をたぶらかして、偽物の宝石を売りつけ、金を稼ごうとします。
ところが、ようやく200万円が貯まったところで、騙した女に逆に騙され、金を奪われてしまう…。
ハセは、悪事を働く割にどこか抜けてて、悪に染まりきれてないんだよね…。
切羽詰まったハセは、商店街にたむろする老人たちを見て、「これからは年寄りだ」と閃きます。
騙すのは、年寄りだ。さびしさは、利用できる。
愛って本当に、世の中で言われるほど、キレイで尊い、よいものなのでしょうか?
正しい愛なんてどこにもない。理想の息子なんて存在しない。
キレイなだけじゃない愛を描いた、「とっておきの話」です。
「ビオレタ」寺地はるな
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寺地はるなさんのデビュー作。
主人公の
菫さんのお店は、「棺桶」を売っているちょっと風変わりな雑貨店「ビオレタ」。
棺桶っていうとドキッとしちゃうけど、生き物の死骸を入れるわけではなくて、大切な思い出や捨てられないものを入れる箱なんだよね。
ビオレタで働くうちに、菫さんの強さの源を知って、自信をつけて、成長していく妙。
悪い想像ばかりして、柔軟に自分を変えることができなくて、傷つくのが怖い…そんな経験はありませんか?
誰かに必要とされたくて、ずっと居場所を探している方に、読んでいただきたい作品です。
2020年は、寺地はるなさんの新刊が続々刊行予定
5月の前に3月にも本出ます。今決まってるだけで2020年は3月5月7月8月10月(11月かも)に新刊が出ます。計5冊。3月は何年も前に書いた短編が入ってるアンソロジーが出るし、9月には文庫化も1冊あります。なぜこんなことになったのかはわたしにもよくわかりません。
— 寺地はるな5/26『水を縫う』 (@tomotera0109) February 9, 2020
寺地はるなさんは、比較的多作で、執筆スピードが早い方。
2015年のデビューから、すでに単行本10冊を数え、雑誌掲載作品や、アンソロジーの参加など精力的に活動されています。
さらに、2020年は新刊5冊の刊行が決定していると、ご本人のTwitterアカウントで明言されています。
寺地はるなさんの作品がまた読めるのはうれしいな。
新刊を読んだら、おすすめランキングに変動があるかもね!
これまでの作品のおさらいをしながら、新刊の発売を楽しみに待っています。
本を読みたいけれど、かさばるから持ち運びにくい、置く場所がない…とお悩みの方には「Kindle」がおすすめ。
いつでもどこでも、片手で読めるから便利。
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