「先生。わたしたち、どうして学校に行かないといけないの?」
明るくてかわいい、キラキラしたグループの子たちを見ていると、自分がとんでもなく地味で場違いな気がしてしまう。
いじめられているわけではないけれど、なんとなく居場所がない。
みんなが自分を見て笑っているのではないかと思うと、自信がない。
こんな気持ち、身に覚えがあって、読んでいるとなんだかつらいよ…。
中学生の女の子たちの、学校への違和感や、揺れ動く気持ちを繊細に表現した作品をご紹介します。
いま学校生活を送っている中学生・高校生の方にも、思春期の子どもがいる親にもおすすめ。
私は、長男が中学1年生で不登校になったので、親の立場としてじっくり読みました。
「雨の降る日は学校に行かない」を解説するよ!
いくつか引用をしており、多少のネタバレがあります。
また、不登校でつらい目にあっている方は、この記事を読むだけでもしんどいかもしれません。
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|学校をテーマにした連作短編集
「雨の降る日は学校に行かない」は、表題作をはじめ全6作品が収録された短編集。
- ねぇ、卵の殻が付いている
- 好きな人のいない教室
- 死にたいノート
- プリーツ・カースト
- 放課後のピント合わせ
- 雨の降る日は学校に行かない
各話のつながりはほとんどないのですが、1話目の「ねぇ、卵の殻が付いている」と、6話目の表題作「雨の降る日は学校に行かない」はつながっています。
そういう意味では、同じ世界観にある連作短編集ともいえます。
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|あらすじと内容
教室にうまく馴染めなくて、居場所を見つけられなくて、息苦しい気持ちでいる女の子たち。
大勢の中にいても、誰ともつながれなくて、誰も自分を理解してくれない、世界にひとりぼっちみたい。
きっと同じような気持ちになったことがある人は共感できるはず。
学校って、異質なものを敏感に嗅ぎ分けて、排除する仕組みになっている気がする。
スカートの長さ、コミュニケーション能力、オシャレでかわいいかどうか…。
優位に立っているように見える、イケてる子たちだって、いつかそのポジションが変わってしまうのではないかと怯えているのです。
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|ねぇ、卵の殻が付いている
ナツとサエは、それぞれの事情で保健室登校をしています。
サエは「ゆで卵の殻をきれいに剥けると、その日は一日中いいことがあるんだよ」なんてかわいいことを言う子。
ナツは、ふたりの楽園がずっと続けばいいと思っていましたが、ある日サエが教室に戻ると言い出します。
いいことなんだけど、素直に祝福できないナツの気持ちもわかる…。
ナツは、サエが自分を置いて先に行ってしまうみたいで、焦りもあるし、寂しいのです。
わからない。わからないんだ。自分にもどうしてなのか。どうして、脚が震えるのか、身体がすくんでしまうのか、ほんとうに、わからない。
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|好きな人のいない教室
森川さんは、女子たちの恋愛トークについていけない、ちょっと真面目な女の子。
隣の席のオタクっぽい岸田くんに、教科書を見せてあげていたことをきっかけに、ふたりの関係をからかわれるように。
岸田くんと同じ小学校出身なこと、ふたりでいて絵を描いているのを見せてもらったこと…なんでもネタにされてしまう。
何を言っても余計炎上して、あることないこと笑われる…こういうの良くないけど、あるあるだよね。
限界が来て、玄関から出られなくなった森川さんは、学校に行けなくなります。
そんな彼女を励ましてくれたのは、他でもない岸田くんでした。
「自分に嘘をついてまで、みんなと合わせたって、きっとなんの解決にもならない」
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|死にたいノート
藤崎涼は、毎日ベージュの手帳に架空の遺書を書いています。
ある日、クラスメイトの河田さんに手帳を拾われ、中身を見られて…とっさに、自分のものだということを隠して嘘をついてしまいます。
そりゃ気まずくて言い出せないよね…。
真剣に心配して、この手帳の持ち主を探そうとする河田さんと、友達のあっちゃん。
笑われたりバカにされるかと思っていた藤崎の心は、どんどん揺らいでいきます。
「きっと、死にたいなんて思ってないよ。この子は、助けてほしいんだよ」
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|プリーツ・カースト
スカートの短さは、教室での地位を表す。
エリは、クラスでイケてるグループに属している女の子。
教室でウケを狙って、小学校のとき友達だった、イケてない福原真由のことを、能面に似ていると言ったエリ。
真由は「おたふくさん」とあだ名をつけられ、いじめに発展。
エリは、自分の発言がきっかけだったこともあり、複雑な気持ちを抱えつつも、場の空気に合わせることを優先して、何も言えません。
エリ、ちょっとひどくない?
そうなんだけどさ、エリだって今さらいい子ぶって「悪口はよくない」なんて言えないんだよ…。
どうして、あたしたちは、スカートの丈が違うだけで、こんなにも違うのだろう。
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|放課後のピント合わせ
しおりは、画像投稿コミュニティに、際どい写真をアップしています。
現実のしおりは地味で目立たないけれど、ここでならたくさんの人がしおりにコメントをくれて、存在意義を見出せる…承認欲求を満たしているのです。
もっと求められる写真を撮ろうと、学校でこっそりスマホ撮影していたとき、担任の柳先生に見つかって、フィルムカメラを貸してもらいます。
撮りたいものなんてない。光を欲しいのは、光を浴びたいのは、だって、あたし自身なんだから。
ファインダー越しに世界を覗くことで、新しい交友関係ができていく…一歩踏み出したしおりを応援したいです。
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|雨の降る日は学校に行かない
第1話「ねぇ、卵の殻が付いている」で登場したサエが、保健室登校になるまでの経緯が描かれています。
この作品中では「さっちゃん」って呼ばれてるけど、同一人物だね。
6作品の中では、もっとも明らかにいじめにあっていて、ひどい仕打ちに心が痛くなります。
担任の先生は理解がなく「もっと努力してさ、うまく生きられるようにならないとな」なんて言ってくるし…。
わたしは、どうしてここにいるんだろう。どうして、いやな思いをして、こんな目に遭ってまで、教室に足を運ばないといけないんだろう。
サエの心を救ってくれたのは、保健室の先生でした。
サエは何も悪くないのに、いじめた相手の子や、無理解だった担任たちはまったくおとがめなし…モヤモヤするけれど、描かれていないところできちんと罰を受けていると信じています。
学校に馴染めない子はダメな子じゃない
うちの長男は、中学3年生で、中1の夏休み明けから学校に行っていません。
中3になってから一度だけ登校できましたが、今のところそれっきり。(※2020年6月現在)
長男の不登校のことは、メインブログに詳しく書いています。子どものこと|シーアカフェ
長男の場合はいじめなどの直接的な原因はなかったし、本当は中学校生活を楽しんでほしかったけれど、本人が無理ならもう仕方ないのだなととらえています。
長男自身にも問題はあるけれど、学校に行っていないからダメというわけではないと、彼を通じて学びました。
いろいろと問題満載な長男だけど
— シーア🍀よくばりブロガー (@seer1118b) June 16, 2020
犬を眺めてるとき、なでてるときの
優しい目を見ていたら…この子は大丈夫だって思うんだ😌
まぁ、そんな気分は他の問題ですぐにかき消されてしまうんだけどもw
「雨の降る日は学校に行かない」相沢沙呼|まとめ
学校って閉鎖的だけど、絶望するだけじゃない結末だよ。
6人の女の子たちは、自分なりのやり方で戦い、学校という場所で生き抜く方法を模索します。
自分の考え方が変わることもあるし、周りの子たちも成長していく。
思春期って未熟だし不安定だから、ずっとこのまま大人になる子なんていないんです。
今はつらくて、これから先もずっと許せなくても…いつかは受け入れて前に進める日が来ると願っています。
こんな保健の先生がいてくれたらいいな。
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「かがみの孤城」は、不登校の中学1年生女子、こころが主人公。
辻村深月さんが描く、すこしファンタジー風味の再生物語を味わってくださいね。
著者の相沢沙呼さんは、ミステリー小説で有名。
「このミステリーがすごい!」などの賞を総なめにした「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」は、ラストのどんでん返しが爽快ですよ。
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