父親が3人、母親が2人もいて、苗字は3回変わり、家族の形も7回変わった…そんな女子高生・優子の、ちっとも不幸じゃない人生。
2019年本屋大賞受賞作、家族の新しい価値観を見せてくれる作品をご紹介します。
「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ
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かわいそうなんかじゃなくて、健気だとか、ひたむきっていうのともちょっと違って…とにかく、優子を応援したくなるんです。
読み終わったあとも、じわじわと幸せな気持ちが湧き上がってくる、そんな小説。
「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ|登場人物
- 森宮優子
- 森宮壮介(3人目の父親)
- 水戸秀平(生みの父親)
- 田中梨花(2人目の母親)
- 泉ヶ原茂雄(2人目の父親)
森宮優子は、高校3年生の17歳。お父さんの「森宮さん」は37歳。
生まれたときは、水戸優子。そして、田中優子になって、次は泉ヶ原優子を経て、現在の森宮優子に…
だけど、優子はとてもフラットな感覚を持っていて、日々の些細な幸せを見つけて暮らせる女の子なのです。
徐々に、優子の生い立ちや、苗字が変わったきっかけ、ターニングポイントとなった出来事が回想のように語られていきますよ。
「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ|あらすじと内容
- 第1章 優子の高校3年生の1年間
- 第2章 就職して22歳の優子が結婚を考える
始業式からスタートし、球技大会や、合唱コンクール、受験、そして卒業式。
青春そのものの高校生活の合間に、過去の回想シーンが入り、優子を形作るものが見えてきます。
優子には親がたくさんいますが、デメリットはさわやかに受け流し、メリットはとても大きく感じる…明るい受け止め方が清々しいのです。
幸せの形は自分で決める。ステレオタイプな価値観にNO
複雑な家庭環境、落ち着かない生活、何度も変わる苗字…「こんな子はきっと、深い悩みや鬱屈を抱えているだろう」と思われがち。
だけど、優子は至って普通で、「悩みがないことが悩み」というくらい、その場の状況を受け入れて暮らしています。
そりゃもちろん、慣れ親しんだ人と離れるのは寂しいし、涙がこぼれることはあるけれど、根本の部分では周りの人を信じていて、立ち直れる。
それに、優子は、離れてしまった人のことはもちろん、いま自分のそばにいる家族を大切にする気持ち、自分に愛情をかけてくれる大人の気持ちが、きちんと分かる子。
大人の勝手な都合で人生を振り回されていても、そのときどきのベストを尽くせるんです。
今まで優子に関わってきた大人は、みんな完璧なんかじゃないし、それぞれ弱いところ、どうしようもないところもあります。
だけど、優子を思う気持ちは、誰もが共通して持っているのです。
客観的で大人びたところは、環境に合わせてしなやかに動いてきたから
ときには、女子ならではのややこしいいざこざに巻き込まれて、いじめとまではいかないけど、気まずくなったりすることも。
だけど、優子はどこか客観的で、他人事のような感覚。
「そりゃ仲直りしたいけど、集団で生活してたらこういうこともあるし、時間が解決するから」っていう感じで、淡々としているんです。
周りの子は、親に反抗したり、言うことを聞かなかったり、ケンカをすることって当然ある年頃ですが、優子は森宮さんとギクシャクすると、心ここにあらず。
「お父さんウザい」と言っている友達に、「こんなに悪口を言っていても一緒に暮らせるって、血のつながりって深いんだな」と感心しちゃう優子。
保護者がたびたび変わって、環境に自分を合わせていかなくてはならなかったことと、つながっている気がします。
優子の恋愛事情は、親の影響もたくさん受けている
たとえば、一緒に球技大会の実行委員になった浜坂くん。
いつも面白い話題を提供してくれる脇田くんとは、しばらくお付き合いしていました。
優子は、自分がモテる理由を「梨花さんと一緒に暮らしてたからかな」と自己分析します。
梨花は美人ですが、産みの母親ではないから、顔は似ていません。
だけど、長い期間と濃い時間を過ごしたから、人との接し方や雰囲気、笑顔を欠かさないことなど、いろんな影響を受けました。
そして、合唱コンクールのピアノ伴奏で一緒になって、素晴らしいピアノを披露した早瀬くん。
優子は、早瀬くんに圧倒的に惹きつけられ、そこはかとない魅力を感じます。
どんな親からも、たっぷりの愛情といいところを受け継いで成長する
今一緒に暮らしている森宮さんは、いきなり高校生の優子の父親になったので、当然ぎこちないのですが、優子の親になれてよかったと心から思っています。
森宮さんの思い描く「普通の父親」像が、人とズレまくっていて、始業式の朝ごはんにトンカツを揚げたりしちゃう。
梨花は、計画性がなくてお金があればあるだけ使ってしまったり、突然優子を置いて出ていってしまったり、森宮さんと結婚したのにすぐに離婚したり…と、いろいろすごい人。
ですが、優子との暮らしを守るためだったら何でもしてしまう、深い愛を持っているのです。
生みの父親の水戸秀平は、なんといっても血がつながっているし、小さい頃の思い出もあります。
泉ヶ原さんは、どっしりと構えた包容力のあるいいお父さんで、優子の中学生時代はグランドピアノのあるおうちで落ち着いて過ごせました。
どんな親も、いいところがたくさんあって、常にポジティブな面を見ていれば、幸せな家庭は自分たちでつくれる。
家族ってこうあるべき、愛ってこうじゃなきゃ…そんな決まりきった形でなくても、彼らはきちんと家族なんです。
「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ|身近な人への感謝と愛を再確認する、家族の物語
親になった人たちは、誰も優子をお荷物扱いしないし、優子との暮らしを楽しんでいます。
もちろん、優子にはつらいこともいっぱいあったし、順風満帆ではありませんでした。
性格によっては、苗字や親が変わるなどのひとつひとつを重くとらえて、暗く落ち込んでしまう子もいるはず。
だけど、優子というひとりの子どもの幸せを、2人の母親と3人の父親が、ただ一心に願う…こんな幸せな家族なら間違いありません。
読み終わったあと、周りの大切な人に勧めたくなる、感謝と愛を伝えたくなる…そんな作品ですよ。
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