こんにちは。シーアです。(@seer1118b)
男と女が、引っ越し前夜のがらんとした部屋で静かに向かい合う…
ただならぬ雰囲気で、お互いに、違った思惑を秘めながら。
ふたりが解き明かしたかったのは、ひとりの男の死。
ですが、探り探りの緊張感のある会話から、思わぬ真実が浮かび上がります。
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
恋愛小説のようで、ミステリーのような、感情のジェットコースターに乗せられたような…。
行き着く先はどこなのかを見届けたくて、どんどん読み進めてしまう作品です。
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸|あらすじ
たぶん、これは一枚の写真についての物語なのだろう。むろん、ある男の死を巡る謎についての物語でもあるし、一組の男女の別れの話でもある。
主な登場人物は、ふたりの男女です。
- 高橋千浩(ヒロ)…冷静で取り乱さないタイプの男性。
- 藤本千明(アキ)…頭がよく、理性的な女性。
ふたりは、かつて恋人同士でした。
しかし、恋人になってから、家庭の事情で離れ離れになった双子だと知るのです。
恋人としてでなく、兄妹として、一緒に暮らすことにしたふたりに、葛藤がなかったわけではありません。
ですが、ぎこちない日々に終止符を打つ決定的な出来事は、ある男との出会い、そしてその男の死でした。
それは、自分たちの存在を知らずに母と別れた、父親だったはずの男。
登山のガイドをしていた男は、ふたりを案内する道中、転落事故で突如亡くなるのです。
ふたりは、お互いに、「ヒロがあの男を殺したんでしょ」「アキが殺したんだろう」と疑いを消せません。
その謎を明らかにしなくてはならない、と決意して、最後の夜に向き合います。
音、匂い、光…様々なきっかけでよみがえる記憶が、思わぬ展開に
物語は、千浩と千明が交互に語り手になって進みます。
理知的なふたりだから、声を荒らげるようなことはないけれど、それがかえって息が詰まるような緊張感を生んでいます。
ふたりは、双子なのに、小さい頃の記憶がちぐはぐ。
離れ離れになる前、一緒の時間を共有していたはずの時期もあるはずなのに…なんだかかみ合わないのです。
山の匂い、初夏の風、木々の間から差し込む木洩れ日…徹底的に過去と向き合う一夜が、記憶を呼び覚まします。
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸|ふたりのその後が気になる結末
これからどうなっちゃうんだろう、というスリリングな気持ちで、ラストまで連れて行かれるような作品。
二転三転する真実を追いかけて、落ち着くべき結末を知ったとき、不思議な解放感があります。
朝の光とともに、明かされる真実。
だけど、熱が冷めてふと振り返ったとき、ふたりのこれからを考えたら…。
でも、秘密を知ってしまえば、知る前には戻れません。
知らないほうが幸せだったかもしれない。だけど、真実を追求してしまう。
複雑な事情に翻弄されて、結果的にねじ曲げられた、ふたりの恋愛観。
あなたは、結末を知って、どんな感想を抱きますか?
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恩田陸さんの著作は多数ありますが、中でも直木賞、本屋大賞をダブル受賞した「蜜蜂と遠雷」は傑作。
文章からピアノの音が聞こえてくる…そんな体験が味わえます。
引っ越し前夜の夜明けまで、というワンシチュエーションは、「早朝始発の殺風景」に通じるものがあります。
こちらは短編集で、千浩や千明よりも若い学生が主役の、ライトなミステリー。
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