美しさと、えぐさと、儚さと、生々しさと。
見ないふりをしたいようなことを、目の前につきつけられるような世界観。
目を背けたいのに、視線が離れてくれない、そんな作品をご紹介します。
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直木賞候補作でしたが、受賞にはならず…でも、正直、直木賞らしくないなって感じていました。
なぜなら、既存の価値観を揺るがす、いろんな意味で「問題作」だから。
「くちなし」彩瀬まる|短編全7作のあらすじ
表題作「くちなし」をはじめとした、全7作品の短編集です。
- くちなし
- 花虫
- 愛のスカート
- けだものたち
- 薄布
- 茄子とゴーヤ
- 山の同窓会
どの作品も、あらすじをすべて書いてしまうと、とたんに色褪せるような気がしています。
第1話|くちなし
ユマは、不倫相手のアツタさんから、関係を終わりにしようと告げられます。
別れる代わりに、アツタさんの左腕をもらう…。
元恋人の腕を愛でて、一緒に暮らしますが、ある日妻がやってきます。
第2話|花虫
運命で結ばれたふたりが出会ったとき、互いにしか見えない花が咲きます。
神秘的で、艶めかしい、不思議な花。
しかし、その花の謎を解こうとする人物が現れて…。
第3話|愛のスカート
出張ヘアカットで再会した、元恋人で変わり者の同級生のトキワ。
レディースアパレルブランドを立ち上げて有名になっていたトキワですが、想いを寄せる人がいました。
どんなに願ってもこちらを向いてくれなかったトキワの、恋の手助けをしてしまう私。
第4話|けだものたち
女は夜に、男は昼に…生きる時間を分断した世界。
男と女は、ほんの少し触れ合う時間で、家庭を築きます。
しかし、感情を燃え上がらせた女は、「けだもの」になって、男を食べてしまいます。
第5話|薄布
夫とは会話がなく、息子は反抗期。
崩壊した家庭にストレスを感じて、後ろめたい「お人形遊び」に夢中になる私。
「お人形」とは、異国の少年。戦火を逃れて運ばれてくるのです。
第6話|茄子とゴーヤ
夫が亡くなり、娘達も出ていき、ひとりになった私。
思い立って、町のオウミ理容室で、髪を茄子色に染めてもらいます。
オウミさんも、妻に出て行かれて、店先にゴーヤを植えて暮らしています。
そんなふたりの刹那のやりとりが、心を震わせます。
第7話|山の同窓会
人間は、3回目の産卵でたいてい死んでしまう…。
卵を身ごもるたびに、身体は衰えるのに、それが美徳とされる世の中。
そんな中、一度も産卵せず、子どもを育てる乳母でもない私は、存在意義がわからないでいます。
友人が山に還る(=死)を見送る日々…。
「くちなし」は、彩瀬まるの問題作
「くちなし」は、どれも今までの「当たり前」をなぞってくれないお話ばかり。
グロテスクで、艶かしくて、人によっては嫌悪感を抱くかも。
どれも、まったく違う世界の物語ですが、この短編集の根底に流れている空気感は同じものを感じます。
誰かを愛おしいと思う気持ちと、傷つけたい、憎い、奪いたいと思う気持ちは紙一重。
愛すれば愛するほど、憎らしくなるし、奪いたくなるし、自分が自分じゃなくなってしまう。
そんな、狂おしいほどの愛を、胸焼けするくらい受け取るような、そんな作品です。
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