こんにちは。シーアです。(@seer1118b)
「3月のライオン」では、主人公の桐山零と、川本家の次女、ひなた(ひなちゃん)との関係が大きな見どころ。
それは、ひなちゃんから零への呼び方が、その都度変わること。
名前の呼びかけ方って、相手との距離感や、言葉にできない本音、そのときの気持ちを反映しているもの。
この記事では、「3月のライオン」のひなちゃんと零の関係を、呼び方を軸に考察していきます。
ひなちゃんの繊細な感情や、小さな気遣いが感じられて、「3月のライオン」の世界がより深まりますよ。
単行本7巻の冒頭あたりまでのストーリーを、さらっとネタバレしています。
まだ知りたくないという方はご注意下さいね。
3月のライオン|ひなちゃんから零への呼びかけ方がコロコロ変わる
あかりさんは「桐山くん」と呼ぶし、モモちゃんはいつも「れいちゃん」と呼びますが、ひなちゃんだけは零の呼び方が固定されていません。
- 桐山くん
- 零くん
- 零ちゃん
- れいちゃん(れーちゃん)
- あなた
このように、ひなちゃんは、そのときどきによって、零の呼び方を変えているんです。
同じシーンでも、次の一言目には変わっていることも。
作者の羽海野チカさんが語る|ひなたが零の呼び方を変える理由
実は、この疑問はファンの間では有名で、作者の羽海野チカさんご自身が、Twitterでこのように答えていました。
川本家のひとたちが,零のことを「桐山くん、零ちゃん、零くん」って呼び方が変わるけれど、私の中では、そのシーンに一番合った呼び方で描いておりまして。法則とか整合性とか…私の中にはあるのですが、うまく言葉にできません。すみません。その呼び方以外だと、はまらなくてかけなくて
— 羽海野チカ🐴ダイアリー1/29発売🌸🐱 (@CHICAUMINO) 2012年3月24日
シーンの雰囲気に合った呼び方、つまり一言で言うと「なんとなく」呼び方が変わっているとのこと。
その呼び方がしっくりきた理由はあるけれど、「なぜ?」と聞かれても言語化できない…。
空気感というか、フィーリングなんですね。
「なんとなく」こそ、本当の気持ちが隠れているような気がしませんか?
そこで、ひなちゃんの呼び方に見る、ふたりの関係性やひなちゃんの気持ちを考えました。
「零くん」と呼ぶときは、まだ関係性を測りかねていた頃
出会って間もない頃、ひなちゃんはよく「零くん」と呼んでいました。
ひなちゃんにとって零は、あかりおねいちゃんが夜の街で拾ってきた、酔っぱらってつぶれたガリガリの男の子。
まだ少し距離を感じていたり、どう接していいか測りかねていたのかな。
でも、よくよく考えてみたら、中学生の女の子が、知り合ったばかりの高校生男子を、下の名前で呼ぶって、けっこう最初から距離が近いですよね。笑
ひなちゃんが、明るくオープンな性格だからこそ、零の心もほぐれていったのでしょうね。
ふたりの距離が縮まって、「零ちゃん」「れいちゃん」と呼ぶように
2巻目以降、「零ちゃん」「れいちゃん」という呼び方が、よく登場するようになります。
「零くん」より、もっと親しみを込めた呼び方。
会う機会が増え、そのたびにいろんな会話を重ねて、距離が縮まったんですね。
例えば、ひなちゃんが想いを寄せる、野球少年の高橋くんに、お弁当を渡そうとして、うまくいかなかったり。
お盆のとき、お母さんのことを思い出して、家族から離れて大泣きしてしまったり。
ひなちゃんにとって、零は、家族とは違った角度から、見守ってくれる相手になりました。
おねいちゃんが連れて帰ってきたときと違って、頼れる一面も見せてくれるように…。
そんな零ですが、泣き虫で、不安定で、放っておけない一面も。
零と義姉の香子が言い争っている現場を目撃しつつも、ひなちゃんは零にひな祭りのおいなりさんが入ったお重を手渡します。
ひなちゃんにできる、唯一で最大限のことは、おいしいごはんを食べさせてあげること。
零のために何かしてあげたい…そんな気持ちが膨らんできたんですね。
「桐山くん」と呼ぶのは、よそゆきだったり、あらたまったとき
高橋くんと偶然会って、ひなちゃんが緊張して何も話せなかったとき、零は高橋くんに、自分が高校に入り直した理由などを語りました。
まだ話し足りなさそうな高橋くんに、零は、「ひなちゃんを通して、また会おう」と気を利かせます。
つまり、このシーンでは、直前まで高橋くんがそばにいたってこと。
だから、ひなちゃんは、ちょっとよそゆきの「桐山くん」と呼んでいたんですね。
そのあと、家でごはんを食べて、零を見送るときは、すっかりリラックスしたムードで「れいちゃん」と言っています。
また、ひなちゃんの学校でいじめがあったとき、ひなちゃんが孤立しないように、お昼休みに高橋くんとキャッチボールをしました。
そしたら、いじめっこグループの女子たちに、「ビッチ」と陰口を言われて、余計逆効果に…。
ひなちゃんは、人一倍まわりに気を遣う子。
だから、ひなちゃんのことを思って動いてくれた零が、こんな形で気に病んだり、「ごめん」と謝ったりするのは、全然望んでいないんです。
そんなとき、ちょっとあらたまって「桐山くん」と呼びかける…ひなちゃんの繊細な感情が読み取れますね。
「あなた」は、運命的なシーンで初登場。ふたりの関係が深まる!
ひなたは、いじめが解決していない中、修学旅行で京都へ。
一緒にいられる友達もおらず、ひとりぼっちで、鴨川沿いにやるせなく座っていると…
大阪で新人王戦を終えた零が、ひなちゃんの目の前にいきなり現れるのです。
零は、一瞬ちらっと見ただけの、修学旅行の日程表の記憶を頼りに、約束もなしにひなちゃんを探し当てます。
そんな零の姿を回想して、心の中で「あなた」と呼びかけるひなちゃん。
これまで、ひなちゃんは、零を異性として意識していなかったはず。
たったひとり知らない土地にいるとき、零が来てくれて、ほっとした気持ちになったひなちゃん。
きっと、零が特別な存在だったことを自覚したのではないでしょうか。
3月のライオン15巻では、呼び方が「れいちゃん」固定
このように、シーンによって呼び方がコロコロ変わってきたひなちゃんですが、ついに15巻では呼び方が固定になりました。
ひなちゃんの登場シーンは少ないものの、必ずひらがなで「れいちゃん」と呼んでいます。
実は、15巻では、零とひなちゃんの関係に大きな進展があるのです。
ひなちゃんの気持ちが落ち着いたことで、零の呼び方も安定したのかなと思います。
3月のライオン|零も、一人称がときどき変わる
あと、思うのですが、自分の事も、(例えば男の人だったとして)「僕は/おれは/自分は」のように、相手や、その時のその場の雰囲気で、言い方をかえたりしませんでしょか。わたしは、かえるので。 なので、まんがも自然にそうなってしまいました。解り辛くてごめんね(´ω`)
— 羽海野チカ🐴ダイアリー1/29発売🌸🐱 (@CHICAUMINO) 2012年1月14日
羽海野チカさんもおっしゃっている通り、零自身も、自分の呼び方が変わることがあります。
基本的には「僕」ですが、将棋で熱くなったときや、気持ちを抑えられないとき「オレ」と言っています。
黒星が積み重なってきて、今期昇格の可能性がなくなり、どうすればいいかわからないとき、心の中で「中途半端だ、僕は」と言っています。
一方で、自分の弱さに甘い、覚悟ができていない棋士とのやりとりに苛立ち「みんなオレのせいかよ!」と叫ぶことも。
つまり、ひなちゃんだけじゃなく、みんながそのときの感情で、呼び方を変えているというわけですね。
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「3月のライオン」の登場人物たちは、生身を感じるほどリアル!
そのときの気分で、なんとなく自分や周りの人の呼び方を変える…そんな経験は自分自身にもあります。
周りの人の呼び方につられちゃったり、聞いている人の様子をうかがって変えてみたり。
設定がどうとか、表記の揺れとか、リアルでは関係ありません。
そう考えると、零やひなたは、マンガの登場人物ではあるけれど、なんだか生身の人間のように身近に感じます。
このように、キャラの気持ちや関係性を考えてみるのも、マンガのまた違った楽しみ方ではないでしょうか。
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