運命の恋の相手が、異性だとは限りません。
震えるほどの恋を経験した、ふたりの女の子たちの物語をご紹介します。
作品中に描かれるのは、「のの」と「はな」の手紙やメールのやりとりのみ。
ふたりの熱い感情を覗き見るみたいで、不思議な背徳感があります。
友達以上の関係になったふたりが、どんな大人になっていくのか…ひそやかな女子大河小説です。
「ののはな通信」を解説するよ!
「ののはな通信」三浦しをん|登場人物
「ののはな通信」は、横浜のミッション系お嬢様学校、聖フランチェスカに通う、ふたりの女の子が主人公。
- 野々原茜(のの)…貧乏な家で育った、頭が良くてクールな女の子。ネガティブに考えがちなタイプ。
- 牧田はな…外交官の家系に生まれた帰国子女。勉強は苦手だけど、甘え上手で友達が多い。意外とタフ。
ののとはな。ふたりは正反対なようで、なぜか気が合い、かけがえのない間柄になります。
「ののはな通信」三浦しをん|あらすじ・内容
ののとはなは、手紙を通じてさまざまなことを語り合います。
ののは、自分の生まれ育った家庭の貧しさや、親に「いい大学に入って、いい会社に勤めて…」と期待されているのが重いこと。
はなは、いつか海外で働きたいと思っているけど、帰国子女なのに英語の文法はめちゃくちゃだし、成績もさっぱりなこと。
マンガの感想、家庭のこと、先生と生徒のゴシップ…話題は永遠に尽きません。
ふたりは特別な親友なんだね。
ののは、はなに対して、友達以上の感情…つまり恋愛感情を抱くようになります。
女の子同士なのに?って思っちゃうかもしれないけど、それだけお互いに大切で、運命を感じた相手だったんだね。
ののは、意を決して、はなに思いを告げます。
はなも、ののの気持ちを受け入れ、ふたりは秘密の恋人同士に。
不器用でぎこちないながらも、幸せな日々は、ある裏切り行為によって、唐突に終わりを迎えるのです。
詳しくは、本作を読んでみてね!
女子校出身なら共感できる!ののとはなの文通
私は、神戸の中高一貫の女子校に通っていました。
フランチェスカと同じように、ミッション系で、お嬢様といわれるおうちの子が多い学校。
だから、ののとはなの高校時代の雰囲気は、手に取るようにわかります。
授業中にメモを回して会話したり(私も回したことある!)、リアルでもたくさんしゃべるのに、長文の手紙まで書いてしまうの、身に覚えがあります。
女子校の先生が、生徒に手を出すのも、奥さんがその高校の元生徒っていうのも、ありがちな話。
実は、私の高校時代にも、そういう噂の先生はいたよ…!
ののとはなは、学校では他の友達とも仲良くしていますが、お互いが特別すぎて、まるで他の子を排除しているかのよう。
特に、手紙には「村ちゃん」と「しのぶ」の名前がよく登場しますが、村ちゃんはウワサ好きで信用ならない人、しのぶは傍観者めいていて本心がわからないと、ほとんど悪口を言われ(書かれ)ています。
同じグループで、いいところだって知っているのに、そうやって他の子には文句を言ったりするのも、経験してきた自覚があるのです。
私は高校の途中くらいでポケベルが出はじめたくらいの世代だよ。
ポケベルって今の若い人は知らないんじゃない?
ののとはなの高校時代は1983年〜で、私の高校時代よりさらに10年以上前だけど、通信手段は家の電話か手紙だけ。
ツールが進化して、手紙からメールに変わっても、交わしたい言葉がたくさんあることや、人の本質は変わりません。
長い空白期間を経て、ふたりの関係性は変わっていくけれど、お互いにかけがえのない存在なのです。
ののとはなの関係は周囲に気づかれていた?
ののとはなが、ただの親友ではなく、恋人同士だったこと、周囲の人には気づかれていたと思います。
個人的な感想だけどね。ふたりはバレていないと思っていたようだけど…周りの人だって、そんなにバカじゃないよ。
はなは、良くも悪くも素直で天真爛漫だから、隠しごとに慣れていなくて、きっと挙動不審になっていたはず。
ののは、頭の回転が早くて賢い子ですが、はなへの熱い気持ちを隠し通せるほど、経験豊富ではありません。
実際、はなの妹のみどりには冷ややかな目で見られていたし、他の家族にも「お姉ちゃん、もしかして野々原さんと…?」と疑惑を伝えていた可能性があります。
彼女たちがちょっとバカにしていた、村ちゃんやしのぶだって、気づかないふりをしていただけかもしれません。
授業中に回していた手紙、こっそり中を覗いたクラスメイトがいてもおかしくありません。
こういうのって、本人たちは夢中になってて周りが見えていないのかもね。
ののとはなの20年以上もの人生ドラマ
「ののはな通信」のストーリーは、前半が高校時代、中盤は大学時代の手紙のやりとり。
それから長いブランクがあり、大人になってそれぞれの生活をしているふたりのメールのやりとり。
最後に、その通信が突如終わるまでの、20年超もの長期間に渡る物語です。
最後に何があったかは、読み終わった今も私にはわからないままだよ…!
まるで、現代版かつ女性版の大河ドラマのような壮大さで、生きる意味や存在意義を語りかけてくれます。
三浦しをんは、女同士・男同士の恋愛にも柔軟
三浦しをんさんは、BLや百合の世界に詳しい方。
エッセイやインタビューでも、性別の垣根を超える愛について語られています。
ご自身の作品では、古書店の店主と幼馴染を描いた「月魚」が最もBLに近い雰囲気です。
はっきりとは言わないけれど、そこはかとなく漂うBL臭。
とはいえ、作品はフラットな立場で書かれることが多く、「ののはな通信」ほど明確に女同士の恋愛が描写されているのは珍しい。
本作で、ここまでストレートに描いているのは、理由があります。
運命の相手との恋を失っても、その経験を糧にして、外の世界とよりよく関わっていくため。
ひとつの恋が終わっても、その後の人生は続いていて、生きていかなくてはならないから。
「ののはな通信」三浦しをん|まとめ
ののとはなは、若く未熟な頃に、激しい運命を恋を経験し、大人になっていきます。
あまりに衝撃的すぎて、一生かかってもこの恋を超えることはできないかも…と思うほど。
ふたりにとって、この恋は、人を愛する喜びを知るとともに、嫉妬や切なさなど、これまで味わったことがない感情の扉を開きました。
だけど、こんなにも美しい愛の形を知ることができる人は、実は限られているのかもしれません。
ふたりの未来がもう交わることはなくても、かつての大切な恋は損なわれることなく、輝いています。
「ののはな通信」を読んで、どんな感想を抱くかは、人によって結構分かれそうな気がするよ。
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ののとはなの恋は、失恋とはいえないけれど、ハッピーエンドとも言いがたいもの。
誰かを思う気持ちが強ければ強いほど、切なさや後悔など、たくさんの感情を経験するのかもしれませんね。
三浦しをんさんの作品は幅が広く、スポーツものもあれば、お仕事小説もあり、コメディもあり…どんな方にも気に入る小説あるはず。
「神去なあなあ日常」は、林業に飛び込んだ若者の成長と、田舎生活を描いています。
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