📕「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな
— シーア🍀よくばりブロガー (@seer1118b) September 30, 2020
新刊買いました🥰
人口300人の小さな島で
民宿兼託児所を運営している千尋🏠
親子関係に悩める人たちを
ありのまま受け入れてる✨
寺地はるなさんの作品は
こうあるべきという呪縛をしなやかに解いていく🥺 pic.twitter.com/0e51agoxYL
周囲の人やお客さんとふれあい、自分自身の生い立ちと向き合いながら、本当の願いを見つめ直す、強さと優しさに満ちた作品をご紹介します。
小さな島で、託児所を併設した民宿を営んでいる女性…というと、心あたたまるほっこりストーリーを期待するかもしれません。
そう思って読むと、いい意味で裏切られるかも!
なにしろ、民宿の主である千尋は「ほっこり素敵発言であなたを救うみたいなのは期待しないでくださいね」と言い切る女性です。
ありのままを包み隠さずストレートに表現する千尋の言葉は、悩める人の心をふっと軽くしてくれます。
お客さんだからってむやみにおもねることなく、フラットで正直な目線に勇気がもらえる小説です。
「彼女が天使でなくなる日」を解説するよ!
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな|登場人物
「彼女が天使でなくなる日」は、九州北部の星母島が舞台。
人口300人ほどの小さな島で、子どもにまつわる願い事が叶うという「母子岩」には、家族や親子など人間関係に悩める人が訪れます。
- 千尋…「民宿えとう」の主人。親がおらず星母島で政子さんに育てられた。1年前、麦生を連れて島に戻ってきた。
- 麦生…千尋の恋人。色素の薄い美しい男。大阪の飲食店で働いていて千尋と出会い、島についてきた。
- 政子さん…千尋の育ての親。腰を痛めて「民宿えとう」を千尋に引き継いだ。派手なピンクの髪で好きなことをして暮らしている。
- まつり…政子さんの孫で、千尋と姉妹のように育った。麦生に好意を持っている。
千尋の母親は急死し、父親は行方をくらまし、政子さんが母親代わりでした。
そんな背景もあってか、麦生とともに星母島に帰ってきたけれど、いつか麦生がいなくなっても泣かないようにと覚悟しながら暮らしています。
麦生を島に縛りつけるようなことをすまいと、将来を約束することを痛々しいほどに避ける千尋が切ないんです。
結婚しようとか絶対言わないもんね。
千尋は生きていく中でいろんなものを失ってきたから、期待しすぎないようにって思ってるんだね。
一方、麦生は純粋に千尋のことが好きで、ずっとここで暮らす前提で話しているのがとても微笑ましく、千尋の心をゆっくりと溶かしていきます。
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな|あらすじ・内容
「民宿えとう」は託児所を併設しており、深夜から漁に出る家庭の子や、親が病気の子などを預かっています。
千尋自身も複雑な生い立ちを抱えていますが、やってくるお客さんたちも相当訳あり。
仕事と0歳児のワンオペ育児の両立に疲れ果てながらも、完璧な母親像にとらわれている理津子。(第1章:あなたのほんとうの願いは)
娘を天使と呼んで溺愛し「ひとりじゃなんにもできない子」と決めつける伊岡婦人と、39歳という年齢でありながら母親の束縛から抜け出せない娘の愛花。(第2章:彼女が天使でなくなる日)
伊岡母の毒親っぷりは、だいぶイライラさせられたよ!
麻奈と絹は、高校時代の親友同士。(第3章:誰も信頼してはならない)
ですが、絹は麻奈の彼氏を奪って結婚し、麻奈は「絹に一生子どもができませんように」と母子岩に願いにきました。
千尋は、麻奈の願いを「そんなこと考えちゃだめですよ」なんて言いません。「許せないにきまってます」と断言します。
癇癪を起こす敏感なひかると、父親の孝喜の「ふつうの子だったらいいのに」という願いも胸をしめつけます。(第4章:子どもが子どもを育てるつもりかい)
みんな「誰かにとっての普通」ではなく、自分にとっての幸せを求めればいいと思わせてくれます。
千尋の言葉を聞いていると、自然とそう思えるね。
子育てのリアルな喜びや苦しみが詰まっている
「彼女が天使でなくなる日」には、さまざまな親と子が登場します。
冒頭、「民宿えとう」にやってくる前に、理津子の独白に胸をぎゅっとつかまれます。
死ぬわけにはいかない。自分が死んだら、達樹はどうなる。まだ一歳にもなっていない、たったひとりの息子。死んではいけないと重々わかっているのにうっかり死にたくなってしまうほど、睡眠不足と空腹は人間から正常な判断力を奪う。
子育て経験のある方には、特に胸が痛くなるのではないでしょうか。
死にたくなるほど追い詰められているのに、その一瞬後に息子が「立っち」できたことに手放しで喜び、さらにその一瞬後には、成長をともに喜びあえる存在が誰もいないことに悲しくて泣き出してしまう。
感情が秒単位で目まぐるしく動いて、コントロールできない。
私自身、子どもが小さい頃は、全てに必死で自分自身がなくなってしまったかのようだったので、理津子の戸惑いに共感してしまいます。
今は子どもが大きくなって通り過ぎた感じだけど、夜泣きとか離乳食とか、しんどかったことは忘れられないよ。
夜泣きを乗り越えるための民宿
「彼女が天使でなくなる日」を読んでまっさきに思い出したのは、Twitterで見かけた、かねもとさん(@kanemotonomukuu)のマンガ。
ブログを更新しました。夜ひとりで夜泣きの子供を見てるときにこんな場所があればいいなーって思ったときのやつです!日本のどこかで誰かが必ず、子供を抱えて起きているはず… #夜泣き小屋 #夜泣きhttps://t.co/MPpClP4v4s pic.twitter.com/3nilHv3ad3
— かねもと@10/23新刊 (@kanemotonomukuu) March 27, 2017
「民宿えとう」が夜泣き小屋みたい、というわけではなくて…最後まで読むと、何のことかわかってもらえるはず。
彼女の行動力を持ってすれば、本当に作れそうですね。
この世のどこかにあったらいいのになぁ。
「今日のハチミツ、あしたの私」と関連あり
寺地はるなさんはシリーズ作品がなく、基本的にどの作品を読んでも単独で楽しめるのですが、本作では珍しく過去作品との関連があります。
「彼女が天使でなくなる日」には、「今日のハチミツ、あしたの私」の碧が作ったハチミツが登場します。
ファンにとっては、久しぶりの再会みたいでうれしいね!
碧本人は出てこないのですが、養蜂にチャレンジした彼女が元気でやっている様子がうかがえます。
世界はつながっているんだなと感じられますね。
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな|千尋の名言
「彼女が天使でなくなる日」には、すっと心に染み込んでくる名言がたくさんあります。
ここでは、一部を抜粋してご紹介します。
「彼女が天使でなくなる日」の世界を感じてもらえたらいいな。
「なにかの経験をした人が、その経験がない人に『あなたにはわたしの気持ちがわからない』と言う行為、わたしは嫌いです」
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな|P85 (角川春樹事務所)
伊岡(母)に「親にならなければ、本当の親の気持ちはわからない」と言われた愛花に、千尋が言った言葉。
千尋はこのことをくり返し、いろいろなシーンで伝えており、自分と他人の領域をくっきり区別する潔さを感じます。
愛花の心に届いたかは微妙ですが、いつか彼女にも意味がわかる日がくればいいな。
「人間はみんななにをしでかすかわからないし、信頼できません。ちょっとした原因と動機ときっかけがそろえば、誰でも罪を犯す可能性はある。(中略)信頼なんて簡単にしてはいけないんです」
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな|P138 (角川春樹事務所)
絹に子どもができないことを願った麻奈に「わたしみたいな女、信頼できませんよね」と言われ、千尋が返した言葉。
「そんなことないですよ」と慰めを言わないのが千尋らしい。
言い換えれば、自分の責任と判断だけを信じろという意味にも取れます。
千尋の言葉を聞いていると、なんだか勇気がもらえるね。
愛想笑いやお世辞は言わない、人に媚びない千尋の物言いが好ましく感じられます。
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな|口コミ・評判
寺地はるなさんの作品は、読書家や書店員さんを中心に好評です。
Twitterでつぶやかれている感想をピックアップさせていただきます。
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな #読了
— ごまん太今年は後厄🔥 (@pappara_gomata) September 28, 2020
女だったら大体の人が「あぁ~💢」ってなる瞬間を一つ一つ切り取ってストンッと心地いいところに着地させてくれる本でした…ワンオペ育児して一人親になった私、わかる…わかる…ってしながらページをめくったよ…笑
最後の政子さん痛快で最高でした! pic.twitter.com/5Gk60f4c9i
すっかり遅くなってしまいました💦
— こなつむり書店員アカ (@conatumuribooks) September 23, 2020
申し訳ございません。
寺地はるな先生@tomotera0109 の#彼女が天使でなくなる日 が
入荷いたしました。
ほんっと全てのママに読んでいただきたいですね。
スッと入ってくると思います。
押しつけとかじゃなく、じわ〜っと
染み入ってきますよ
あったかいものが。 pic.twitter.com/TwiZbbV1Vb
『彼女が天使でなくなる日』(寺地はるな/角川春樹事務慮)読了。読み終えてうぉぉぉぉってなってる。子育て真っ最中の時に読みたかった。小さな島にある託児所付きの民宿を営む千尋、悩みを抱えた客、千尋の恋人や周囲の人。「普通」とか「常識」とかそんなことに囚われない千尋がすごく好きだ。
— うさぎ (@usa_m) September 19, 2020
彼女が天使でなくなる日/寺地はるな(角川春樹事務所)#読了 #のベルズ
— 真琴 (@makomsk) September 17, 2020
女性にとって、結婚とは?出産とは?育児とは?
女性であれば、誰もが直面する問題かもしれません。
そんな悩みを抱える人が訪れる、小さな島の託児所のある民宿。
「願うだけではなく行動しよう」と、背中を押されます。 pic.twitter.com/omT2H4DfMH
寺地はるなさんご本人も、作品への感想を拾って積極的にリツイートされています。
「彼女が天使でなくなる日」寺地はるな|まとめ
ただのほっこりストーリーだと思って読んだら、びっくりすると思うよ。
千尋は「スピリチュアル的なことは嫌い」とはっきり言い、母子岩目当てにやってくる観光客とも一定の距離を置きながら接しています。
母子岩に願い事をしても、自分の日常や現実は本質的には変わりません。
本当に思いを伝えるべき相手は、別にいるんじゃないかな?
小さな島で母と子がのんびり過ごすスローライフ的なお話だと侮っていると、ガツンと印象が変わりますよ。
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寺地はるなさんは、親子関係や家族の「当たり前」を壊していく作品を多く書かれています。
読み終えたあとは、「こうあるべき」という呪いが少しずつほどけていきますよ。
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