「漢」と書いてオトコと読む。歴史小説が好きなシーアです。(@seer1118b)
歴史小説は、漢字が多く、固くて重い印象で、とっつきにくいと感じる人も多いはず。
軽いタッチで、読みやすい歴史小説をご紹介します。
- 早雲の軍配者
- 信玄の軍配者
- 謙信の軍配者
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風摩小太郎、山本勘助、宇佐美冬之助の3人が主人公。
日本最古の大学と言われている「足利学校」で、ともに軍学を学びました。
それぞれ、北条早雲、武田信玄、上杉謙信に仕える軍配者として成長します。
別々の道に進んだ彼らの人生が、どのように交差するのか…歴史をベースにはしているものの、人間ドラマが見どころ。
軍配者とは、戦のすべてを指揮する立役者
軍配者とは、あまり聞き慣れない言葉ですが、占術と兵法どちらにも長けた、いわゆる「軍師」のこと。
戦略を立てたり、戦そのものを取り仕切ることはもちろん、天候を読むことまで。
昔は迷信深かったので、戦にまつわる儀式や占いもします。
軍略のすべてを指揮して、主君を勝利に導くのです。
この3部作は、「軍配者」を題材にした創作歴史モノです。
早雲の軍配者|風摩小太郎の青春時代
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北条早雲は、伊豆・相模を平定したあと、次の世代を育てることを考え始めました。
早雲が見出した少年、風摩小太郎。
小太郎は、両親を亡くし、寺の雑務をこなしながら学問を聞き、農家の手伝いをして妹を養っていました。
早雲は、小太郎の学問の才能をさらに伸ばすべく、直弟子として日本最古の大学「足利学校」へ通わせることに。
それが、小太郎の軍配者としての道の始まりでした。
兵法・占術・陰陽道・医術・観天望気・軍陣の作法…学ぶことは多岐にわたります。
どれも、早雲の片腕である軍配者になるために、必須の学問。
足利学校で、山本勘助、宇佐美冬之助らと出会い、友情を育む小太郎。
机を並べて学んだ仲間とも、やがて戦場で再会することになるのですが…。
この3部作の始まりにふさわしい、若さと青春あふれるお話。
小太郎は、不遇にあっても、人を憎まず真っ直ぐで、きれいな目と心をもっています。
戦国の世にあっても、善良さを失わない小太郎だからこそ、応援したくなるのです。
風摩小太郎は、相模国の忍者集団の頭領が代々名乗ってきた名前…という説が有力。
ですが、明確な史実が残っていない人物でもあります。
それを、北条早雲に見出された若き軍配者として描くところが、本作のオリジナル要素です。
信玄の軍配者|不遇の四郎佐=山本勘助
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2作目の主人公は山本勘助。といっても、本当の名前は四郎佐。
いわゆる、なりすましで「勘助」の名を得ました。
勘助は、足利学校を出てからというもの、士官先が見つからず、報われない日々を送っていました。
幼少期に患った病のせいで、顔が醜く、体が不自由。そのせいで、天の邪鬼でひねくれた性格です。
仕官先を求めて放浪し、何年も軟禁されるなど苦難の末に、武田晴信(のちの武田信玄)に出会います。
もともとは、武田信虎が、実子・晴信の暗殺計画を企て、勘助も加担させられたのがきっかけ。
勘助は、「しくじったら命はない」と覚悟して芝居を打つのです。
晴信のもとで、名を改めて、軍配者として名を挙げはじめます。
勘助は、そのとき、40歳を超えていました。
共に学んできた、風摩小太郎や曾我冬之助は、すでに主君を得て活躍していたので、なおのこと。
戦場で風摩小太郎を助けたり、捕虜となった曾我冬之助を逃がすなど、彼らの友情は健在です。
勘助が、冬之助に言ったセリフが印象的。
「お前なんか大嫌いだが、だけど、友達だ。それでいいじゃないか」
自分の気持ちをストレートに表現しない勘助の、精一杯の友情です。
勘助は、武田家の重臣、原虎胤の飲み友達になり、虎胤の娘の千草と出会い、諦めていた、人並みの幸せを手に入れることもできました。
山本勘助は、名前だけ有名な割に、実在していたのかどうか、不明な点が多々ある人物。
それを逆手に取って、新たな人物像を作り出しているのが面白いところ。
武田信玄の右腕だったことは確かですが、実際どうなんでしょうね。
謙信の軍配者|戦の天才・長尾景虎と、軍配者・宇佐美冬之助
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3作目は、曾我冬之助が主人公。名を改め、宇佐美冬之助と名乗っています。
冬之助は、長尾景虎(のちの上杉謙信)に仕える軍配者となりましたが、軍略センスを発揮するシーンがないまま過ごしていました。
景虎には、「毘沙門天の化身」と呼ばれるほどの神業的な戦の才能があり、常識外れの発想で勝ち続けています。
だから、軍配者の作戦がなくても、自らの力で切り拓けるのです。
そして、冬之助メインと見せかけつつ、勘助が結構目立っています。
武田家と上杉家が、長らく戦をしていたというのは、有名な歴史上の事実。
無駄な戦いをせず、調略をしながら、領土拡大をはかる武田信玄。
根回しや政治が嫌いで、自ら先頭に立って敵陣に攻め込む長尾景虎。
双方の対立を中心に描いています。
しかし、ここまで読んできた読者にとっては、勘助(四郎佐) VS 冬之助として映るでしょう。
川中島の合戦に向けて、冬之助が立てている策は、そのまま、勘助が死ぬということにつながります。
勘助に肩入れして読んでいると「ついに来てしまう」という気持ちで、切なくなってしまう。
1冊目の「早雲の軍配者」で登場した冬之助は、オンナ好きで破天荒なキャラでした。
しかし、成長に伴ってか、長尾景虎といるせいか、欲がない人物になっています。
型破りな冬之助が見たかった!
軍配者シリーズは、時代小説が苦手な人でも楽しめる!
富樫倫太郎さんの著作は、会話が多く読みやすい文体。
説明文が少なめで、わかりやすく、戦国時代小説のとっつきにくいところを解消してくれています。
時代物を敬遠してた人にもオススメ。
登場人物が若くて、未来への希望にあふれていて、共感ポイントが多いんです。
1作目で、すんなり世界に入っていければ、あとはどんどん続きが読みたくなりますよ。
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