人はみんなひとりで生まれてきて、ひとりで生きていくけれど、ときどき「みちづれ」を見つける。
夫婦だって、友達だって、ふたりじゃなくて「ひとりとひとり」。
アラフォーの女性ふたりの珍旅行を描いた、ほどよい距離感が心地よいロードノベルをご紹介します。
主人公の弓子は、夫と別居中。
失踪した夫の故郷の島へ行き、なぜかそこで婦人会の手伝いをしたり、夫のハトコにあたるめんどくさい女と関わったり…。
流されているようだけど、どこにいても自分の芯はしっかり持っていて、意外にブレない弓子に共感するのです。
「みちづれはいても、ひとり」を解説するよ!
「みちづれはいても、ひとり」寺地はるな|登場人物
「みちづれはいても、ひとり」は、ふたりの女性が主人公。
- 矢嶋弓子…夫の宏基とは別居中。子どもはいない。すこし前まで契約社員だったが、今は職探し中。39歳。
- 島田楓…性に奔放でいろんな男と付き合うものの、二股はかけない、不倫しない主義。独身で休職中の41歳。
ふたりとも、男にも仕事にも苦労してるなぁ…。
ふたりはマンションの隣の部屋同士だったことから出会い、一緒に食事をする仲になり、なんと旅行にまで行くことに。
ですが、楽しい旅ではありません。
失踪した弓子の夫を、彼の故郷の島で見かけたという情報があり、ふたりで探しに行くのです。
「みちづれはいても、ひとり」寺地はるな|あらすじ・内容
弓子の夫の宏基は、離婚歴があって、前妻との間に高校生の娘がいました。
弓子はそれを知ってて結婚したわけだけど、問題はそれだけじゃないんだ。
娘はメンヘラ気質で、たびたび宏基に連絡をとってきていました。
頼られてまんざらでもない感じだった宏基でしたが、ある日弓子に「抱えこみすぎた」と告げて消息を絶ちます。
弓子と暮らしていた部屋の家財道具を、勝手に処分して…!
精神的に追い詰められたにしては用意周到。
最初こそ探したりしたけれど、ひとりの暮らしで精いっぱいで、「宏基はどこかで生きてるんだろうなあ」と漠然と思っていました。
冷たいようだけど、宏基は自分がかわいいタイプだから死ぬとは思えないね。
一方、楓は、5年間勤めた「横地つけもの」を退職。
二代目社長の横地にしつこく言い寄られて、うんざりしていたのが主な理由でした。
ですが、退職したあとも怒涛のメール攻撃、家に押しかけてくるなどストーカー化しそうな雰囲気。
帰ってきたら家の前に横地が立ってるの、怖いよ…。
弓子は、楓を「宏基をとっちめるツアー(仮)」に誘いました。
休息と気分転換、そして人生に巻き起こるいろいろな物事から距離を取るために。
不思議な関係の女友達ふたりで、夫の故郷の島へ
弓子は、もともと宏基の母親の光恵さんがやっているリボン刺繍教室に通っていました。
同じ俳優さんが好きという共通点があり、個人的に仲良く家を行き来する仲に。
宏基と出会う前に、将来の義母と出会ってたんだね。
光恵さんは「島で宏基の姿を見かけたという人がいる」と弓子に告げたのです。
まさか友達?隣人?と島に来るとは思ってなかっただろうけどね。
シズさんの思い込みと「普通」への憧れ
弓子と楓が訪れたのは、何もない田舎の島。
島での宿泊先に、矢嶋家の所有する家を借りれるよう、光恵さんが手配してくれました。
その家を管理しているのが、宏基のハトコだというシズさん。
シズさんって、世間一般の「普通」にこだわってて、ねちっこくて怖い…。
弓子は、思い込みが激しくてめんどくさいシズさんに振り回され、島の伝統行事で使われる「ミガワリサン」というぬいぐるみ作りに駆り出されます。
でも、なんだかんだで「助かるわ」と感謝されるのが嬉しくて、つい手伝ってしまう弓子。
シズさんが原因で結構サスペンスな展開になるんだけど…詳しくは本作を読んでみてください。
その間、楓は島の男と仲良くなったりして、完全に別行動。
ベタベタしてなくて、でも困ったときは助け合って、相性のいいふたりだね。
ふたりは、島での時間でそれぞれ「自分」を取り戻していきます。
ひとりだけど孤独ではない、人生との向き合い方
弓子は、地味なようで意外とはっきりと物を言う、芯のぶれない性格。
宏基に「女は○○だもんな」という、主語の大きい決めつけを言われるのが嫌い。
誰にでもいい人だと思われたくて、優しさを振りまいておきながら、全部捨てて逃げ出すズルさも。
それでいて、弓子には癒しや甘えさせてくれる環境を求めるそぶりも。
宏基のダメさ、言語化されるとさらに際立つ…!
ひとりだ、とまた思う。夫婦だって、友だちだって、一緒にいるだけで「ふたり」という新たな何かになるわけではなくて、ただのひとりとひとりなのだ。
楓は、いろんな男と付き合うけれど、最近別れたヒラツカさんのことが自覚している以上に好きだったと気がつきます。
それでも他の男と一夜限りの関係を持ってしまう、だらしなくてどうしようもない人だけど、なんだか憎めない。
楓さんは、他人に理解を求めたり、責任を押しつけたりしないところがいいよね。
一緒にいても、自分自身の選択や考え方は揺らがない、揺らがせない。
私もそういう人でいたい…大人同士の付き合い方、距離のとり方について考えさせられます。
「みちづれはいても、ひとり」寺地はるな|まとめ
アラフォーは、人生の折り返し地点。
弓子も楓も、順風満帆とはいえず、思うようにいかないジレンマを抱えながら、それでも自分らしく生きられる道を模索しています。
私も同世代だから、なんだか身につまされるなぁ。
人はきっと、どこまでいっても「ひとり」。自分の責任は自分で取るしかない。
だけど、他の人と話したり、友達になったり、一緒に旅行したり…そんな自分以外の「ひとり」との関係も、人生には欠かせません。
お互いに自立しつつ、助け合いながら人生という海を泳いでいけたらいいな。
寄りかかりすぎないけど、ピンチのときには助け合うのが理想だね!
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